次期社長と訳あり偽装恋愛
きっと素敵な人なんだろうな。
でも、立花さんのことが眼中にないってそんなこともあるんだ。
恋愛って難しいな。
食後に運ばれてきたコーヒーをひと口飲んだ。
「あの、聞いてもいいですか?」
「何?」
「好きな人に告白するのは怖くないですか?」
さっき、興味本意で立花さんに気持ちを伝えないのかと聞いてしまったことを少し後悔した。
私は、告白しても好きな人に振り向いてもらえない辛さを知っている。
人を好きになって想いを伝えても、振り向いてもらえなかったら……と思うだけで怖くて堪らない。
「どうしてそんな風に思うの?」
逆に質問された。
私はトラウマになっている過去のことを話し出した。
「昔、好きだった人に告白して振られたことがあるんです。本気で好きだったからショックが大きくて……。それ以来、恋をするのが怖くなったんです」
立花さんは、少し考え込んで口を開く。
「なるほどね。確かに告白するのは勇気がいるけど、自分の想いを伝えるのは大切なことだと思うよ。振られるのは怖いかも知れないけど、自分から動かなきゃ何も始まらない。言わずに後悔するより、言って後悔した方が気持ち的にも全然違うと思うよ。だから、俺は時が来たら好きな人に告白しようと思ってる。河野さんは恋愛に対してネガティブなイメージを持ってるから怖いって感じるんじゃない?」
そう言われて、ドキッとした。