次期社長と訳あり偽装恋愛
「あそこの信号を右に曲がって少し行ったところの左側にある七階建てのマンションです」
「えっ、もしかしてグレーを基調としてレンガ色も少し入ってるマンション?」
「そうです。この辺、詳しいんですか?」
住んでいるマンションの色を言い当てられ驚いた。
「詳しいというか、俺もあそこに住んでるから」
「えっ、そうなんですか?」
「あぁ」
「こんな偶然があるんですね」
「河野さんにナビしてもらいながら運転していて、まるで自分の家に帰るみたいな道のりだなと思ってたんだ」
まさかのご近所さんというか、同じマンションに住んでいるとは……。
だって、立花さんといえば御曹司。
私でも住めるようなマンションで生活しているなんて想像もしてなかった。
大豪邸の実家暮らし、もしくは高級な高層マンションとかそんな感じかなって勝手に思っていた。
遠い存在だと感じていたけど、少しだけ親近感がわいた。
「河野さんは何階?」
「私は三階です。立花さんは?」
「俺は七階だよ」
「そうなんですね」
そんな話をしているうちにマンションにつき、立花さんは駐車場に車を止めた。
「今まで会ったことがないですよね」
「そうだね。まぁ、去年まで海外にいてここに住みだしたのは四月からだし」
立花さんと二人で並んでマンションのエントランスに入るなんて不思議な感じだ。