次期社長と訳あり偽装恋愛

「あの、それってどういうことですか?」

混乱しながらも、どうにか理解しなきゃと思う。

「河野さん、恋から遠ざかっているんだよね?俺も、しばらく海外にいてこっちのデートスポットとかよく分からないんだ。今後のためにもお互いに恋のリハビリが必要かなと思って」

「恋のリハビリ……ですか?」

「そう。一言で言えば、偽装恋愛。どうかな、この提案」

そう言われて、すぐに受け入れることが出来なかった。

立花さんは次期社長、普通だったら手の届かないような存在の人。
そんな人と偽装恋愛とか勿体ないというか、恐れ多いというか躊躇するのは当然だと思う。

立花さんの言葉を聞いて恋愛に対して前向きに考えられるようになったけど、彼氏いない歴イコール年齢で私の恋愛レベルはかなり低い。

恋愛することに臆病になっていて、殻に閉じこもっていた私には恋のリハビリは必要かもしれない。
だけど、立花さんには好きな人がいるのに、私と偽装恋愛する必要があるのか疑問だ。

そのことを素直に伝えたら、「俺にもリハビリは必要だし、お互いにウインウインな関係だと思うから大丈夫」と笑顔で言い切られた。

その提案を受け入れたらトキメクことや恋するって気持ちを思い出せるかも知れない。
でも、五年も恋心というものから遠ざかっているので、立花さんと恋をするということがいまいちピンとこない。

返事は少し待ってくれるという言葉に甘えて、いまだに返事が出来ないでいる。
すぐに答えなんて出せる訳がない。
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