次期社長と訳あり偽装恋愛
「ちょっと大丈夫?」
むせている私に玲奈が心配そうに声をかける。
「あ、うん。大丈夫。ごめん」
水の入ったグラスを持ち、喉を潤して一息ついた。
あまりにもタイムリーな話で動揺が隠せない。
「で、彼氏は欲しくないの?」
「あー、どうかな。よく分かんないよ」
しつこく聞かれ、私は曖昧に誤魔化した。
立花さんに偽装彼氏の話を持ちかけられていることは内緒にした方がいいと判断したからだ。
流石に同じ会社の社員の玲奈には相談できない。
第一、うちの会社の御曹司なので立花さんの立場だってある。
玲奈のことは信用しているけど、どこから話が漏れるか分からない。
もし、そんなことにでもなったら立花さんに迷惑をかけてしまうから、用心するに越したことはない。
「ごめんね、玲奈」と脳内で謝罪した。
「分かんないって何よ。自分のことでしょ」
「まぁ、そうなんだけどね。私のことはおいといて、そういう玲奈はどうなの?」
これ以上、突っ込まれたくなくて話題を変える。
「来月ぐらいに合コンする予定なんだ。前から気になっている人がいて、その人に来てもらうように頼んでいるから超楽しみ!」
「そっか、上手くいくといいね」
玲奈は本当に嬉しそうな表情をしている。
“恋のリハビリか……”、と小さく呟き残りのご飯を頬張った。