次期社長と訳あり偽装恋愛
「梨音ちゃんはどんな花が好きなんだい?」
「私ですか?えっと、カスミ草とかガーベラが好きです」
突然、好きな花を聞かれて頭に思い浮かんだ花の名前を言った。
学生の頃、ピアノを習っていてこの組み合わせで花束をもらったことがあるのを思い出した。
ピアノ演奏が終わり、両手いっぱいの花束をもらった時は本当に感動した。
ピンクやオレンジのガーベラに白のカスミ草の組み合わせが今でも大好きだ。
そういえば、高校の卒業式にもこの組み合わせで両親から花束をもらったなぁ。
妹の柚音は「花は枯れるから、私はケーキとか食べ物の方がいい」とか言ってたっけ。
自分で花を買うことはないけど、花を見ると癒されるんだよね。
「そうかい。覚えておくよ。それじゃ、草むしりしてくるか」
しげさんは腰をトントンと叩く。
「あまり無理はしないでくださいね」
「ありがとさん。ボチボチやるよ」
そう言うと、しげさんは休憩スペースを後にした。
しげさんと話すとホッと和むと同時に、自分の祖父母のことを思い出した。
そういえば、うちのおじいちゃんやおばあちゃんにしばらく会ってない。
たまには顔を見せに行かないといけないなぁ。
また、おじいちゃんたちが好きないちご大福でも買って行こうかな。
そんなことを思いながら財布から小銭を出し、レモンティーを買って企画部のフロアへ向かった。