次期社長と訳あり偽装恋愛
「な、何も描いてないよ」
「ウソつけよ。何か変な絵を描いてんの見たもん」
「気のせいでしょ」
「気のせいじゃねぇし。俺、視力いいから」
こんな至近距離で視力関係ある?
変な絵とか……失礼なんですけど。
動揺しつつ、何とか誤魔化そうとしたけど更に覗き込もうとする。
もう隠しきれないと観念して手をのけた。
「ん?なんだこれ、犬か?」
複雑そうな表情を浮かべている。
どうせ私の絵は下手くそですよ!
一応、犬のつもりですけど何か?と言いたくなる。
「どうした、そこ!うるさいぞ」
高柳課長に注意され、私は謝罪し肩を竦めた。
企画部課長の高柳千尋さん。
高柳課長は立花さんの同期だ。
課長も立花さんに負けず劣らずのイケメンだ。
二人はうちの会社のツートップのイケメンといっても過言ではない。
銀フレームの眼鏡の奥の瞳は綺麗な二重で、真っ直ぐ通った鼻筋。
身長も立花さんよりも高いかも知れない。
この二人が並んでいると華があり、近寄りがたい雰囲気がある。
高柳課長には彼女がいるとの噂。
それを知って何人の人が涙をのんだか分からない。
「すみません。でも高柳課長、この絵を見てください」
宮沢くんは私の手元の紙を抜き取り、あろうことか高柳課長に差し出した。
嘘でしょー!