次期社長と訳あり偽装恋愛
この文房具が店頭に並ぶんだよね。
嬉しいやら緊張やらいろんな感情が渦巻いている。
「これが店頭に並ぶの、本当に楽しみね。発売に向けてバッチリ広報活動するから」
志保さんが私の肩をポンと叩く。
「ありがとうございます」
頼もしい言葉に私は笑顔でお礼を言った。
ふと、高柳課長と話している立花さんが視界に入った。
真剣な表情で書類に目を通している姿にドキッとする。
恋のリハビリをしてみないかと提案されてから、立花さんのことを意識するというか、自然と目で追ってしまう私がいた。
仕事をしている姿を見ていると、あんな提案をしそうにないのに……。
あの時の立花さんは正気だったのかなと首を傾げるぐらいだ。
でも、アルコールは一滴も口にしていない。
はぁ、どうしたらいいんだろう。
「……さん、河野さん!」
「へ?」
考え事をしていて、呼ばれているのことに気がつかなかった。
声の主は立花さんだった。
「もしかして調子悪い?」
心配そうに顔を覗き込んできて、心拍数が急上昇する。
「いえ、そんなことはないです。大丈夫です」
焦りながら首を左右に振って大丈夫だということをアピールする。