次期社長と訳あり偽装恋愛
「お疲れさまです。企画の河野です。桐野さんから商品の受け取りを頼まれたんですけど」
「あぁ、お疲れさま。話は聞いているよ。納品書を見せてくれる?」
私に気づいた比嘉さんは笑顔を見せた。
納品書を渡すと、比嘉さんは近くに置いていた段ボールの中身を確認する。
「うん、漏れはないみたいだね。ガムテ貼るからちょっと待ってて」
棚に置いていたガムテープを取り、段ボールに貼った。
「じゃ、これよろしく」
比嘉さんは持っていた段ボールを私に渡すと、忙しいのかすぐに背を向けて倉庫内の事務所に入っていく。
「ありがとうございました」
私はお礼を言って倉庫をあとにした。
元来た道を通り、社内に入りエレベーターを押そうとして足を止めた。
両手で段ボールを持っているので、そのままではボタンが押せれない。
一度、段ボールを下に置こうとした時、背後からスッと手が伸びてきてボタンを押すのが視界に入った。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
お礼を言おうと顔を上げたら、そこにいたのは営業部の立花翔真さんだった。
手足が長くモデルのような体型で、ダークグレーのスーツを着こなしている。
サラッとした真っ黒な髪の毛に二重の切れ長の目は涼しげで、鼻筋の通った高い鼻。
薄い形のいい唇が弧を描き微笑んで私を見ている。
ドクンと心臓が跳ね、私は思わず息をのんだ。