次期社長と訳あり偽装恋愛

「もっと軽い感じで考えてみたらいいんじゃない?だって偽装彼氏なんでしょ。付き合ってみて無理だと思うなら断ればいいし、何事も経験だよ」

「そんな軽い感じでいいのかな」

相手に失礼な気がする。
ましてや、会社の御曹司。
音波ちゃんはそれを知らないからあんな風に言えるんだよなぁ。

「あのね、誰も付き合った相手と必ず結婚しろなんて言ってないでしょ。それに、普通に付き合っててもすぐに別れたりするんだよ。相性もあるし、苦手だなと思ってた人が付き合ってみて意外にそんなことなかったりするし。梨音は深く考え過ぎ。向こうだって軽い感じで言ってきたんじゃないの?」

「そうなのかな」

「そうだって。お互いにプラスになるんだから、前向きに考えなよ。それと、お兄ちゃんのバーに行くこともね!」

前向きか……。
立花さんも私が協力してくれたら助かるって言っていた。
もう少し、気楽に考えてもいいのかも。
気持ちが軽くなり、飲みかけのビールを一気に飲み干した。

音波ちゃんと別れて家に帰ると、私は初めて自分から立花さんに連絡を取った。
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