次期社長と訳あり偽装恋愛
「今すぐプリントアウトして、それをコピーして綴じればいいんだから。ほら、さっさと動く。めそめそしている時間がもったいないよ」
「は、はい!」
私の言葉に友田さんはやっと動き出した。
急いで自分の席に座り、パソコンに手をかけた。
プリントアウトした資料を必要部数コピーして机の上に並べ、纏めていく。
さっきはパニックになっていた友田さんも落ち着きを取り戻している。
二人でやればあっという間に終わった。
「梨音先輩、本当にありがとうございました」
「どういたしまして。今度からシュレッダーにかけるときは確認してからにしてね。あと、机の上の整理整頓をちゃんとすること。そしたら、こんなことは起こらないから」
「はい。じゃ、会議室に持って行ってきます」
友田さんは頭を下げ、企画部のフロアを後にした。
私も新入社員の頃、友田さんと同じミスをしたことがある。
だから、彼女のパニックになったりする気持ちがよく分かる。
誰しも通る道だなぁなんてしみじみ思っていると、私の机の上にコーヒーの入ったマグカップが置かれた。