次期社長と訳あり偽装恋愛

「お疲れさま」

「あっ、桐野さん。ありがとうございます」

「どういたしまして。それにしても、梨音ちゃんも成長したわね。先輩として後輩がしっかりしてくれて頼もしいわ」

クスクス笑う。

私が友田さんと同じミスをした時に桐野さんに助けられた。
その時に先輩の優しさと厳しさを教えてもらったんだ。
まぁ、私の場合は机が汚くて書類を間違えてシュレッダーに……ということじゃなかったんだけど。

「とんでもないです。まだまだひよっこですから」

まだ三年目、もう少ししっかりしたいなと思う今日この頃だ。

「よく言うわよ。泉ちゃんに間に合わすわよって言ってたの、かっこよかったわよ」

改めて言われると恥ずかしい。
照れくささを隠すようにコーヒーを一口飲んだ。

「さて、午後からの仕事頑張りましょ」

私の肩をポンと叩き、桐野さんは自分の席へ戻る。
背筋をピンと伸び、颯爽と歩く後ろ姿を尊敬の眼差しで見つめる。
桐野さんはアイディアが豊富で、企画をいくつも通している。

私も頑張らなきゃ。
やりかけていたアンケート集計の続きに取り掛かった。
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