次期社長と訳あり偽装恋愛
「はい。急に炭酸が飲みたくなったので。あの、立花さんはこれからご飯ですか?」
見るつもりはなかったんだけど、立花さんが持っていたかごが視界に入ってしまった。
その中には弁当やサラダ、インスタントのみそ汁やお酒などが入っている。
「あぁ。料理が出来ないからいつも弁当か外食になってしまうんだ」
「えっ?失礼ですけど立花さんはいつもそういったものばかり食べているんですか?」
返事の代わりに気まずそうに頬を掻く。
すごく意外だ。
立花さんは何もかもが完璧で、料理も作れると思っていたから。
それより、外食とかお弁当ばかりじゃ栄養が偏るんじゃないのかな。
そう思ったら、勝手に口が動いていた。
「もしよかったらでいいんですけど、うちでご飯を食べますか?」
立花さんは驚いたような表情で私を見る。
「それは、どういう……」
「自炊しているんですけど、ひとり分を作るのは難しくていつも残ってしまうんです。今日も余らせたので……」
自分の失言に気付き、慌てて口を覆う。
立花さんに余りものを勧めるとか何を言っているんだろう。
それこそ失礼じゃないの!
「いえ、なんでもないです。失礼します」
私はお辞儀し、飲料水のコーナーへ足を向けた。
「ちょっと待って。今の話、ホントにいいの?」
立花さんが私の腕を掴み引き留めた。