次期社長と訳あり偽装恋愛
「実は今日、誕生日なんだよね」
立花さんは前を向きながらポツリと呟く。
えっ、誕生日?
ギョッとして隣に座っている立花さんを見た。
「そうだったんですか?だったら、もっと早く言ってくださいよ」
思わず本音が漏れた。
そういえば、最初にご飯を食べに行った時に来月が誕生日だと言ってた気がする。
今日が誕生日だと知っていたら、高いものは無理だけど何かプレゼントを用意したのに。
ご飯だって屋台の焼きそばとかじゃなく、どこかに食べに行ってもよかったし、食べたい物をリクエストしてくれたら作れたかもしれない。
あれこれいろんなことを考えてしまう。
「いや、この日が誕生日だとか照れくさくて言えなかった」
ポリポリと頬をかく。
じゃあ、どうして今教えてくれたんだろう。
いや、そんなことはどうでもいい。
せっかくの誕生日だから何かお祝いしてあげたいという気持ちがムクムクとわいてきた。
「何か欲しいものはありますか?あ、ケーキも買った方がいいですよね。ってケーキ屋はもう閉まってるか……」
「特に何もいらないよ。こうして河野さんと一緒に花火を見れたから」
「花火は全然見れてませんよね。私がはぐれちゃったから。今からでも見れる場所に移動しますか?」
私が立ち上がろうとしたら、腕を掴まれ引き止められる。