次期社長と訳あり偽装恋愛
のろのろと起き上がり、体温計を脇に挟み熱を測る。
ピピッと音がし、数字を見ると37.5。
すぐに熱が下がるわけがないか。
でも、鼻の詰まりは解消されている。
キッチンに行き、冷蔵庫から水が入っているペットボトルを取り出しコップに入れて一口飲む。
立花さんに返信しておこう。
でも、私が体調が悪いことをどうして知っているんだろう。
高柳課長にでも聞いたのかな。
《返事が遅くなってすみません。まだ熱があり》
あっ、間違えて文章を打っている途中で送信してしまった。
慌てて次の文字を打っていたら既読になり、そのあとすぐに着信音が鳴った。
スマホをタップして電話に出た。
「もしもし」
『もしもし、立花です。いきなり電話してごめん。企画部に寄った時、高柳に君が体調不良で早退したって話を聞いたんだ』
「いえ、わざわざありがとうございます」
『声からして大丈夫そうじゃないね』
私のガラガラ声を聞いて、症状を察してくれたみたいだ。
『何か食べたりした?』
「帰ってきた時にプリンだけ食べました」
『熱はまだあるんだよね。水分はちゃんととれてる?』
「水分はとれてます」
『そうか……。今から部屋に行くから』
「えっ、あの」
決定事項だと言わんばかりに宣言され、通話が終了した。
そして、数分もしないうちに私の部屋のインターホンが鳴った。