次期社長と訳あり偽装恋愛

「どう?」

「美味しいです」

「ホントに?少し味が薄いかなと思ったんだけど」

不安げにしていた立花さんは私の言葉を聞いてホッとした表情を浮かべると、再びレンゲでお粥をすくおうとしていた。

「あの、自分で食べれますから」

「そう?遠慮しなくてもいいのに」

残念そうに言う立花さんからレンゲと茶碗を受け取った。

朝からまともにご飯を食べていなかった私は、茶碗に入っていたお粥を全部平らげた。
熱があるのに、こんなに食べれてしまう自分にビックリしたけど。

「ごちそうさまでした」

「全部食べたんだな」

茶碗を見て嬉しそうに顔を綻ばせる。

「あの、食器とか後で洗うので置いといてください」

「病人はそんなことを気にしなくていいから。薬を飲んで早く寝ること」

立花さんはグラスに水を注ぎ、薬の準備をしてくれる。
何から何までお世話をしてくれて、ありがたいやら申し訳ないやら。
薬を飲んでマスクをつける。

洗い物を済ませた立花さんがベッドのそばにやって来た。
病気の時にそばにいてくれる人がいるっていうのはホントに心強い。
子供の頃、熱を出して寝込んでいる時にお母さんがつきっきりで看病してくれたことを思い出す。

ベッド脇のラグに腰をおろした立花さんは、Tシャツにジーパン姿。
仕事の時のスーツを見慣れているので、こんなラフな服装を見るとドキドキしてしまう。
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