次期社長と訳あり偽装恋愛
しばらくして立花さんはスーツ姿で戻ってきた。
宣言通り、雑炊を作ってくれた。
タマゴを割った時に失敗して殻が入ってしまい、それを必死に取ろうとして悪戦苦闘している立花さんを見て笑ってしまった。
笑うなよ、と言って拗ねている表情が年上の人に対して失礼かなとは思ったけど可愛かった。
お鍋や食器を綺麗に洗ってくれたあと、立花さんは鞄を手にした。
「仕事が終わったらまた来るよ」
「いいんですか?」
「もちろん。なるべく早めに仕事を終わらせるから。じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
立花さんを見送り、私はスマホから会社に電話をかけた。
今日一日、おとなしく寝ていたら熱も下がるだろう。
桐野さんに休むことを伝えるとベッドに寝転がった。
だけど、すぐに眠れるわけもないのでリビングのテレビをつけた。
どのチャンネルも政治のことを扱っていて、病人の頭には内容が何一つ入ってこない。
というか、病気の時じゃなくてもこの話題は難しくて理解できないだろう。
テレビを消し、再びベッドに潜り込み何も考えないようにして目を閉じた。
少し眠り、昼過ぎに目が覚めた。
昼ご飯は朝の残りの雑炊を食べた。
夕方にはすっかり熱も下がっていたので、汗を流すためにシャワーを浴びた。