次期社長と訳あり偽装恋愛

「大丈夫ですよ。それに立花さん、ネットを見ながら料理しますよね?」

「あぁ、普段料理なんかしないから」

当たり前だろと頷く。

「失礼ですが、私が作った方が早くできると思います。立花さんだってお腹が空いてますよね」

正論だったからか、立花さんは気まずそうに言葉を詰まらす。
こんなことを言うのは申し訳なかったけど、仕事終わりで疲れている立花さんに料理をさせるわけにはいかないと思ったんだ。

「ビールを用意するからテレビでも見ていてください」

「しんどくないのか?」

「この通り、元気ですから。はい、座っていてください」

立花さんの背中を押し、強引にリビングのソファに座らせた。

冷蔵庫の中に入っていた食材で簡単なおつまみを作る。
ちくわの中にキュウリを詰め、一口サイズの大きさに切る。
小皿に醤油を入れてわさびを添え、ビールと共に運んだ。

「ありがとう」

「うどん、すぐに作りますね」

キッチンに戻り、鍋を火にかけた。
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