次期社長と訳あり偽装恋愛
「あのさ、そんな顔しないでくれる?」
立花さんはため息をつきながら言う。
そんな顔?
よく分からなくて顔を隠すように俯いた。
仕事で疲れている中、わざわざ買い物をして私の部屋に来てくれたのに不愉快にさせてしまった。
申し訳なさでいっぱいになり、謝罪した。
「すみません」
「どうして謝るんだ?」
「立花さんの気に触るような顔をしてたのかなと思って」
「ちょっと待って。何か勘違いしてない?」
その言葉に顔をあげると、立花さんは困ったように眉尻を下げていた。
「そんな顔っていうのは、帰って欲しくないような寂しそうな顔ってことだよ」
思い当たる節があり、みるみるうちに顔が赤くなっていく。
気持ちが表情に出ていたとか恥ずかしすぎる。
真っ赤に染まった顔を見られたくなくて、視線を逸らした瞬間に私の身体は立花さんの腕の中に包まれていた。
ドキドキして平熱まで下がった熱がまた上がりそうだ。
「どうしてそんなに可愛い反応するかな。無自覚に俺を煽らないで欲しいよ」
突然のことに驚いて固まっている私の肩に顎をのせ呟く。
「帰って欲しくないなら今日も泊まろうか?」
今日もって……あっ!
昨日、私が引き止めた挙げ句、座ったまま寝かせてしまったんだ。
あんな体勢で寝ていたら身体は痛くなるはず。