次期社長と訳あり偽装恋愛

店内は木造ということもあり、木のぬくもりが感じられ、天井から吊るされたランプや照明が凝っていた。
カウンター席、テーブル席、個室と充実している。

玲奈と向かったのは掘りごたつ式の個室で、すでにメンバーは集まっていてお酒を飲んでいた。

「お待たせしました」

玲奈が明るい声を出す。
私も「遅くなってすみません」と軽く頭を下げた。
女性側には二つ空席があり、玲奈が先に座り私は端っこに座った。

「もう自己紹介は済んだよ」

眼鏡の子が玲奈に声をかける。
確かあの人は花田美紀さんだよね。

「ホントに?あー、ごめんね」

「じゃあ、取りあえず二人の名前を聞いてもいい?」

男性側の幹事であろう人が口を開いた。

「私は中村玲奈、二十五歳です。趣味とかは追々話しまーす。で、こっちが友達の梨音です」

ほら、と玲奈は私に自己紹介するように促す。

「河野梨音です。同じく二十五歳です」

特にアピールすることも話すこともないので簡単な挨拶で終了した。
男性陣も改めて自己紹介してくれて、四人とも二十七歳で高校時代からの友人とのことだった。
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