God bless you!~第12話「あたしの力、あなたの涙」
文化祭1日目~写真部・王子様・ホイホイ・2500円
文化祭1日目。
お客を装って、朝一番、
「仲良くやってる?」
場所取りで揉めたという美術部と写真部の諍いに横槍を入れる。
場所を半分ずつ使えば?という提案は却下された。ある程度まとまった広さが必要だと言って、どちらも譲らなかった。結局、日替わりで入れ替えようという事で決着がついたらしい。
「確かに、広い場所が必要だな」
写真部の作成した超巨大パネル。双浜高のありとあらゆる場所を小さなスナップに写し、それを組み合わせて巨大な絵画に仕立てている。それを部員が誇らしく眺めている。
その姿を微笑ましく眺めて、俺は芸術棟を後にした。
双浜グルメストリートは早朝から準備を始めている。
今は外部からの来客というより双浜生で賑わっている……と見て、おおかたは敵情偵察だ。昼時からティータイムにかけて、今年も熾烈な売り上げ競争が繰り広げられる。
焼きそば。たこ焼き。アイスクリーム。ガレット?そこが1番賑わっていた。
そろそろ12:00。我がバレー部の発表が迫る。
今年もお客の少ないカス時間だ。被害は少なければ少ない程良い。
ステージ発表は順調に進行。準備も万端で、見ると、裏方は殆どは2年生が大勢動いている。こうやって来年は段取りの分かる2年が3年になり、準備から見届けて行くのだ。やけに切なさが込み上げる。(浅枝のせいで。)
そこへ……満を辞して、バレー部が登場。
今年の2年生は一体どんな恥を晒してくれるのか。
(去年の恥が気になる人は、第6話へGO!)
何故か、桐谷が1人だけステージに出てきた。
ていうか、2年生はどうした?
「すいやせんっ!1年3組っす!オレ達の模擬店に来て下さいっ!男気をよろしくっ!」
それだけ言って引っ込んだ。
ものの10秒、あるか無いか。
舞台はすぐに暗転。場面転換のBGMが掛かる。
という事は、次の準備が始まっている。
俺はと言えば……込み上げてはみたものの、出口が見つからない。
1年3組を見に行く事にした。
3階にあがる階段あたりから、異様な雰囲気は漂う。強烈な匂い。どうみても食べ物じゃない。
何だ?何だ?とその匂いにつられてなのか、生徒も外部も、老若男女が次々と3階に上がっていく。
階段を上がりきると、廊下から1年の6クラスが一望できるのだが。
何故だ?
そこは……ギラギラのネオン街。
文字通り、廊下に添え付けられた虹色のライトがそこら中を照らす。
1組の教室に、何故か1年3組の桐谷始め、男子が大勢いた。
というか、男子しか居なかった。
そのうちの1人が俺に気付いて、
「あ!沢村先輩、よかったらうちで働きませんか?高給待遇でっせ」
軽々しく声を掛けてくれるぢゃないか。
どこで調達したのか、中学生と思しき詰襟の制服なんか着ているのだ。
「コスプレの展示?そういう事?」
他の男子はと言えば、通り過ぎる他校の女の子に次から次へと声を掛け、そしてその先、2組の教室に消えていく。「1組は控え室に借りてるだけですよ」と誰かが言った。
2組の教室を覗いた。そこは……男子高のホストクラブと化している。
詰襟は序の口。親から借りたのか、スーツもいた。入っていく女の子も他校の生徒が圧倒的に多い。それに混ざって双浜の女子もいて。
桐谷に、バレー部・ステージの一件を問い質した所、
「先輩に頼み込んで、時間貰ったんっすよ。宣伝したくて。もうナリ振り構ってらんないんで」
頼む方も頼む方なら、譲る方も譲る方だ。
桐谷のせいにして恥ずかしいステージの回避を目論んだのかもしれないが……後が怖いゾ。(黒川が黙ってる訳がない。)
「沢村先輩……」
ゾクッと悪寒が走る。異様な気配を感じた。
振り返ると、全身白いスーツの……真木だ。
「お、おまえ……」
そこから声が出ない。
顔立ちもまだあどけない真木が白いスーツを身に纏い、内側のシャツは時代錯誤のフリルが幾重にも広がって……というか、異様に似合っているので言葉を無くす。おそらく安物のスーツだと思うのだが、真木が着ると、どことなく高貴な雰囲気が漂った。ヤサグレ返上。まさに、王子様。
「ぐすっ」
半分ベソを掻いた真木が、両隣を女子に囲まれて(捕まえられて)共に消えていく。
思いがけず、モテ期が到来。
何だか、見てはイケないものを見てしまったような。
俺は群集にもまれながら、早々に通り過ぎた。
3組の教室に通りがかった。見に来たはずの肝心な場所だが、ここだけが唯一、人の波から陥没している。
中を覗くと、真ん中に大きな2つの箱。
〝集金〟と名の付いたその箱の周りを、腕章をつけた関係者と思しき2年生が5人ほど、取り囲んでいる。3年もちらほら居る。内柔外剛、3年剣道部の主将が居た。
ほどなく1人の女子がやってきて、箱の1つにお金を入れる。
謎の3組を後にして、さらに先に進んだ。
お客を装って、朝一番、
「仲良くやってる?」
場所取りで揉めたという美術部と写真部の諍いに横槍を入れる。
場所を半分ずつ使えば?という提案は却下された。ある程度まとまった広さが必要だと言って、どちらも譲らなかった。結局、日替わりで入れ替えようという事で決着がついたらしい。
「確かに、広い場所が必要だな」
写真部の作成した超巨大パネル。双浜高のありとあらゆる場所を小さなスナップに写し、それを組み合わせて巨大な絵画に仕立てている。それを部員が誇らしく眺めている。
その姿を微笑ましく眺めて、俺は芸術棟を後にした。
双浜グルメストリートは早朝から準備を始めている。
今は外部からの来客というより双浜生で賑わっている……と見て、おおかたは敵情偵察だ。昼時からティータイムにかけて、今年も熾烈な売り上げ競争が繰り広げられる。
焼きそば。たこ焼き。アイスクリーム。ガレット?そこが1番賑わっていた。
そろそろ12:00。我がバレー部の発表が迫る。
今年もお客の少ないカス時間だ。被害は少なければ少ない程良い。
ステージ発表は順調に進行。準備も万端で、見ると、裏方は殆どは2年生が大勢動いている。こうやって来年は段取りの分かる2年が3年になり、準備から見届けて行くのだ。やけに切なさが込み上げる。(浅枝のせいで。)
そこへ……満を辞して、バレー部が登場。
今年の2年生は一体どんな恥を晒してくれるのか。
(去年の恥が気になる人は、第6話へGO!)
何故か、桐谷が1人だけステージに出てきた。
ていうか、2年生はどうした?
「すいやせんっ!1年3組っす!オレ達の模擬店に来て下さいっ!男気をよろしくっ!」
それだけ言って引っ込んだ。
ものの10秒、あるか無いか。
舞台はすぐに暗転。場面転換のBGMが掛かる。
という事は、次の準備が始まっている。
俺はと言えば……込み上げてはみたものの、出口が見つからない。
1年3組を見に行く事にした。
3階にあがる階段あたりから、異様な雰囲気は漂う。強烈な匂い。どうみても食べ物じゃない。
何だ?何だ?とその匂いにつられてなのか、生徒も外部も、老若男女が次々と3階に上がっていく。
階段を上がりきると、廊下から1年の6クラスが一望できるのだが。
何故だ?
そこは……ギラギラのネオン街。
文字通り、廊下に添え付けられた虹色のライトがそこら中を照らす。
1組の教室に、何故か1年3組の桐谷始め、男子が大勢いた。
というか、男子しか居なかった。
そのうちの1人が俺に気付いて、
「あ!沢村先輩、よかったらうちで働きませんか?高給待遇でっせ」
軽々しく声を掛けてくれるぢゃないか。
どこで調達したのか、中学生と思しき詰襟の制服なんか着ているのだ。
「コスプレの展示?そういう事?」
他の男子はと言えば、通り過ぎる他校の女の子に次から次へと声を掛け、そしてその先、2組の教室に消えていく。「1組は控え室に借りてるだけですよ」と誰かが言った。
2組の教室を覗いた。そこは……男子高のホストクラブと化している。
詰襟は序の口。親から借りたのか、スーツもいた。入っていく女の子も他校の生徒が圧倒的に多い。それに混ざって双浜の女子もいて。
桐谷に、バレー部・ステージの一件を問い質した所、
「先輩に頼み込んで、時間貰ったんっすよ。宣伝したくて。もうナリ振り構ってらんないんで」
頼む方も頼む方なら、譲る方も譲る方だ。
桐谷のせいにして恥ずかしいステージの回避を目論んだのかもしれないが……後が怖いゾ。(黒川が黙ってる訳がない。)
「沢村先輩……」
ゾクッと悪寒が走る。異様な気配を感じた。
振り返ると、全身白いスーツの……真木だ。
「お、おまえ……」
そこから声が出ない。
顔立ちもまだあどけない真木が白いスーツを身に纏い、内側のシャツは時代錯誤のフリルが幾重にも広がって……というか、異様に似合っているので言葉を無くす。おそらく安物のスーツだと思うのだが、真木が着ると、どことなく高貴な雰囲気が漂った。ヤサグレ返上。まさに、王子様。
「ぐすっ」
半分ベソを掻いた真木が、両隣を女子に囲まれて(捕まえられて)共に消えていく。
思いがけず、モテ期が到来。
何だか、見てはイケないものを見てしまったような。
俺は群集にもまれながら、早々に通り過ぎた。
3組の教室に通りがかった。見に来たはずの肝心な場所だが、ここだけが唯一、人の波から陥没している。
中を覗くと、真ん中に大きな2つの箱。
〝集金〟と名の付いたその箱の周りを、腕章をつけた関係者と思しき2年生が5人ほど、取り囲んでいる。3年もちらほら居る。内柔外剛、3年剣道部の主将が居た。
ほどなく1人の女子がやってきて、箱の1つにお金を入れる。
謎の3組を後にして、さらに先に進んだ。