God bless you!~第12話「あたしの力、あなたの涙」
鮮やかに、真っ二つ~桐谷VS波多野 再び
1年3組の有志の皆様。
締め切りは、確か今日。月曜日の放課後まで、と言ったはずだ。
放課後になって随分待った。まだ出て来ない。
仕方なく、教室まで出向く事にした。
それを言うと、「んじゃ、校内デートしますかぁ」と、右川もニコニコと付いてくる。
相棒を差し出して、「飲む?」「飲む」まるで餌付けだ。「いる?」と、右川が誰かから奪ったとかいうブラックサンダーも加わって、「おう」と俺も貰う。餌付け上等!2人並んで、しばらく味わった。
「今日は、少し強く言おうと思ってる」
覚悟を伝えると、右川は俺を見上げて、「らす」と敬礼した。
これじゃどっちが上の立場だか分かりゃしないな。
1年3組。俺達は、クラスに足を踏み入れた所で、固まった。
凄いことになっている。
赤じゅうたんがないのが不思議なくらい。
教壇に立つと、まるで自分が教会の神父にでもなったようで。
クラス、その真ん中をヴァージン・ロードよろしく、向かって右が男子。左が女子。鮮やかに、真っ二つだった。
右川と顔を見合わせた。
困惑している俺に反して、「すげぇ」と、右川は大喜び。
両者の言い合いは、前回よりもさらに激しさを増していた。
「模擬店って、何食わす気だよっ!」
「食わす?冗談!作るの、あんただから」
「オレ、焼き鳥でいいや。塩でよろしくぅ~」
「うるせ!とっととアタマ焼けや!」
音痴の歌は聴きたくない!
あんたのエア・ギターなんか見たくもない!
踊れないデブ!
鈍クサいクズ!
「あたし達、もうやめます!3組は無しで」
1人飛び出したと思ったら、開口一番、その波多野が言い捨てる。
俺は頭を抱えた。それだけは言わせたくなかった……。
「そんなクラス、聞いた事無いよ」と、やり返してはみたものの、ちょっと説得力に欠ける。
てゆうか、女子軍団の、俺をどこか疑って掛かる目線が怖い。
「こいつらと何やったって失敗ですよ。だったらオレらも最初からやんなくていいっす」
「だけど、親とか中学の友達とか見に来て、何にも無いなんて、ちょっと恥ずかしくないか?」
桐谷には真面目に説得してみた。
「もしかして原田先生に頼まれて、説得に来たんですか?」
「あ?」
波多野の問いかけに、それまで黙って笑っていた右川が顔を向ける。
それを受けて、桐谷が俺に向かって教える事には。
「原田が、こないだHRで言ったんすよ。生徒会の沢村と右川を見ろって。あいつらも昔はケンカばかりしてたけど、最近になって付き合いだすほど仲良くなったぞって。だからおまえらも上手くやれって事が言いたいらしいんですけど」
「だけど!」と、波多野が脇から刺し込んだ。
「あたし吹奏楽の先輩から聞きましたよ。沢村さんは!」と俺を指差す。
「右川先輩に弱みを握られて、それで仕方なく付き合ってるんですよね?てことは、右川先輩のほうが上を行ってるって事でしょ。会長と議長じゃどっちが強いか言わなくても分かりますけど」
「よく見ろよ!」と、今度は桐谷が喰って掛かる。
「どう見てもバカっぽいこの人が、難しい段取りなんかできる訳ないだろ。影で操ってんのは沢村先輩だ。本気だしたら男の方が強いに決まってんだよ。沢村先輩はバレーで鍛えた体だってあるんだから、どうみてもチビなこの人が叶うわけねーって」
「ちょっと待って!沢村さん、ついこないだ絆創膏貼ってたでしょ?知らないの?重森さんとケンカして負けたんだよ。こう見えてケンカ弱いの。でも右川先輩はその昔、重森さんを倒したって聞いた事がある。見た目じゃないの。ここよ、ここ!」
波田野は自身の頭を弾いて、「結論、右川先輩のほうが賢くて強い!」
「ばぁーか!重森さんは、沢村先輩には本気でかかったかもしんないけど、女子には手加減したんだよ。付き合ってる2人の間に手加減はいらねー。最後に行き着く先の主導権は当然、沢村先輩だ。生意気な女はヒーヒー泣いてビクンビクンするしかねーんだよ!」
「バッカじゃないのっ!あんたらって頭ん中それっきゃないわけ?アホ!サル!バカ!」
「それが嫌なら別れちゃえだろ。先輩、2次元最高っす!行き着く先がたとえ誰でも、オイラは楽しいっ」
「言われなくても、2人はとっくに別れてますから!だから志望校変わってんでしょ」
「そりゃよかった!沢村先輩だって、おっぱいデカい方がいいに決まってんだし!」
「当然よ!右川会長は、サルなんか相手にしませんっ!」
俺は教壇を蹴とばした。
割れるような音をたてて、教壇がヴァージンロードに倒れる。
「おまえら、いいかげんにしろ!」
一瞬、水を打ったように場が静まり返った。
そして俺の半径5メートル以内から人類は遠ざかる。息を呑む音がはっきり聞こえたし、「やべ」「やべやべ」と茶化す輩も、ここから丸見えだ。
見ると、右川もそいつらと一緒になって縮こまって……何ていうか、当てにならない。
桐生。
波多野。
2人を名指しで挙げる。
「とにかく、明日までに絶対決めて来い!」
締め切りは、確か今日。月曜日の放課後まで、と言ったはずだ。
放課後になって随分待った。まだ出て来ない。
仕方なく、教室まで出向く事にした。
それを言うと、「んじゃ、校内デートしますかぁ」と、右川もニコニコと付いてくる。
相棒を差し出して、「飲む?」「飲む」まるで餌付けだ。「いる?」と、右川が誰かから奪ったとかいうブラックサンダーも加わって、「おう」と俺も貰う。餌付け上等!2人並んで、しばらく味わった。
「今日は、少し強く言おうと思ってる」
覚悟を伝えると、右川は俺を見上げて、「らす」と敬礼した。
これじゃどっちが上の立場だか分かりゃしないな。
1年3組。俺達は、クラスに足を踏み入れた所で、固まった。
凄いことになっている。
赤じゅうたんがないのが不思議なくらい。
教壇に立つと、まるで自分が教会の神父にでもなったようで。
クラス、その真ん中をヴァージン・ロードよろしく、向かって右が男子。左が女子。鮮やかに、真っ二つだった。
右川と顔を見合わせた。
困惑している俺に反して、「すげぇ」と、右川は大喜び。
両者の言い合いは、前回よりもさらに激しさを増していた。
「模擬店って、何食わす気だよっ!」
「食わす?冗談!作るの、あんただから」
「オレ、焼き鳥でいいや。塩でよろしくぅ~」
「うるせ!とっととアタマ焼けや!」
音痴の歌は聴きたくない!
あんたのエア・ギターなんか見たくもない!
踊れないデブ!
鈍クサいクズ!
「あたし達、もうやめます!3組は無しで」
1人飛び出したと思ったら、開口一番、その波多野が言い捨てる。
俺は頭を抱えた。それだけは言わせたくなかった……。
「そんなクラス、聞いた事無いよ」と、やり返してはみたものの、ちょっと説得力に欠ける。
てゆうか、女子軍団の、俺をどこか疑って掛かる目線が怖い。
「こいつらと何やったって失敗ですよ。だったらオレらも最初からやんなくていいっす」
「だけど、親とか中学の友達とか見に来て、何にも無いなんて、ちょっと恥ずかしくないか?」
桐谷には真面目に説得してみた。
「もしかして原田先生に頼まれて、説得に来たんですか?」
「あ?」
波多野の問いかけに、それまで黙って笑っていた右川が顔を向ける。
それを受けて、桐谷が俺に向かって教える事には。
「原田が、こないだHRで言ったんすよ。生徒会の沢村と右川を見ろって。あいつらも昔はケンカばかりしてたけど、最近になって付き合いだすほど仲良くなったぞって。だからおまえらも上手くやれって事が言いたいらしいんですけど」
「だけど!」と、波多野が脇から刺し込んだ。
「あたし吹奏楽の先輩から聞きましたよ。沢村さんは!」と俺を指差す。
「右川先輩に弱みを握られて、それで仕方なく付き合ってるんですよね?てことは、右川先輩のほうが上を行ってるって事でしょ。会長と議長じゃどっちが強いか言わなくても分かりますけど」
「よく見ろよ!」と、今度は桐谷が喰って掛かる。
「どう見てもバカっぽいこの人が、難しい段取りなんかできる訳ないだろ。影で操ってんのは沢村先輩だ。本気だしたら男の方が強いに決まってんだよ。沢村先輩はバレーで鍛えた体だってあるんだから、どうみてもチビなこの人が叶うわけねーって」
「ちょっと待って!沢村さん、ついこないだ絆創膏貼ってたでしょ?知らないの?重森さんとケンカして負けたんだよ。こう見えてケンカ弱いの。でも右川先輩はその昔、重森さんを倒したって聞いた事がある。見た目じゃないの。ここよ、ここ!」
波田野は自身の頭を弾いて、「結論、右川先輩のほうが賢くて強い!」
「ばぁーか!重森さんは、沢村先輩には本気でかかったかもしんないけど、女子には手加減したんだよ。付き合ってる2人の間に手加減はいらねー。最後に行き着く先の主導権は当然、沢村先輩だ。生意気な女はヒーヒー泣いてビクンビクンするしかねーんだよ!」
「バッカじゃないのっ!あんたらって頭ん中それっきゃないわけ?アホ!サル!バカ!」
「それが嫌なら別れちゃえだろ。先輩、2次元最高っす!行き着く先がたとえ誰でも、オイラは楽しいっ」
「言われなくても、2人はとっくに別れてますから!だから志望校変わってんでしょ」
「そりゃよかった!沢村先輩だって、おっぱいデカい方がいいに決まってんだし!」
「当然よ!右川会長は、サルなんか相手にしませんっ!」
俺は教壇を蹴とばした。
割れるような音をたてて、教壇がヴァージンロードに倒れる。
「おまえら、いいかげんにしろ!」
一瞬、水を打ったように場が静まり返った。
そして俺の半径5メートル以内から人類は遠ざかる。息を呑む音がはっきり聞こえたし、「やべ」「やべやべ」と茶化す輩も、ここから丸見えだ。
見ると、右川もそいつらと一緒になって縮こまって……何ていうか、当てにならない。
桐生。
波多野。
2人を名指しで挙げる。
「とにかく、明日までに絶対決めて来い!」