God bless you!~第12話「あたしの力、あなたの涙」
★★★右川カズミですが……「ごめん、ちょっとだけ」
「ごめん、ちょっとだけ」
胸元から、小さくそう聞こえた。
沢村の手は制服の上から、左の胸をとらえる。
ちょっと驚いたけど、立ったまま、そのまま、あたしは目を閉じた。
体中が熱くなる。この瞬間を逃がしたくないと、この時思った。
「あ……」
思わず声が出て、あたしは上を向いた。
体中が粟立つ。まるで酸素が奪われているみたいに、呼吸が難しい。
喉を縮めると、まだ口の中に残っていたアメが咽喉に引っかかって、うっかり変に飲み込んでしまう所。あたしは慌てて下を向いた。
どの位時間がたったかな。
目を開けると、同じ目の高さに、沢村の顔があって。
驚いた。
彼の、こんな表情は見た事が無い。
それは何だか、最高に苦しそう。目を閉じて眉間に深いシワが出来ている。たぶん、今までで1番最高に人相悪い。40度の熱でもあるんじゃないか。具合悪いの?呼吸が荒くて、もの凄く苦しそうで。
大丈夫?
てか、何で?
これって嬉しい事じゃないの?男子はヘラヘラしちゃうんじゃないの?
だって、海川なんか二次元のグラビアだけで、もうトロけそうなくらいウットリしてるよ。
あたしは彼の表情に驚いたまま、されるがままだった。胸元を探るその手は、あたしの頭の中をも、ぐるぐると掻きまわす。その感覚を、驚きと刹那でもって受け止めて。
誰かが外を通り掛かる声に反応して、沢村は慌てて離れた。
腕で顔を半分隠しながら、「ごめん」と謝る。
「そんな、謝らなくても……」
あたしは全然、嫌じゃなかった。
誰だか知らないが、外の野郎、邪魔すんなって感じ。
何だか、ゾクゾクした。この先に、これからの色々が、きっとある。
沢村先生、ちょっとだけとか言わず、もっと行け。
この時はボーッと……。
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