冬に咲いた春、僕は無くならない恋に堕ちる
たぶん、僕に春が来る
そのには、相原さんの担任の横島先生が立っていた。
「何か悩み事ですか?」
ふふと笑いながら茶色の髪を耳にかける。
「あっ、いえ、そんな大したことじゃないんですけど」
いきなりの登場にしどろもどろな答えしか返せない。
「ふふっ、そうでしたか。てっきり彼女さんの悩み事か何かかと思いましたよ?」
少しからかうような言いようで、椅子に腰をかける。
「えっ、、、いや違いますよ…僕、彼女いないですし」
あははと誤魔化し笑う。
(あれ、思ってたこと声に出てた...?ヤバイ、どこまで声に出てた?好きとか彩桜とか愛してるとか、言ってないよな)
同い年ぐらいのはずなのに、大人な雰囲気の横島先生に圧倒される。
心の中の僕は冷や汗たらたら。けれど、横島先生は僕とは裏腹に満足気に笑みを浮かべていた。
「そうですか、ならいいんです。なにか悩みあったら言ってくださいね?いつでも力になりますから」
また、ふふと笑みを浮かべている彼女にありがとうござますとだけ言っておいた。
「それじゃあ」
「あっはい」
少し違和感を覚えながらも、返事を返す。
「あぁ、それと」
保健室をあとにしようと、横島先生が立ち上がると思い出したように口を開いた。
「私たち同期ですし、2人の時はタメにしません?」
少し僕が驚き黙っていると横島先生が慌てたように言葉をつなぐ。
「あ、いえ、その同い年ぐらいの先生が入ってきてくれて嬉しくて...風信(かざのぶ)先生は新学期入ってから忙しそうでなかなか話せなかったので」
見ると少し照れくさそうに視線を落としていた。
「なんだ、そんなことでしたか」
ニコッと今度は本物の笑顔で答える。
(横島先生とは接点がなかなか無くて近寄りがたかったけど、そんなこともないみたいだ)
「じゃあ、改めてよろしく、横島」
僕は右手を差し出した。
「はい、よろしくね。風信くん」
横島先生は、少し無邪気そうに笑って僕の右手と握手を交わした。
(なんだ、意外と可愛いところもあるのか)
なんて思ったが、そんな事より僕が強く思ったのは、飲みに行った時どさくさに紛れて相原さんのことを聞き出してやろう。という決心だった。
今度こそ、横島先生は保健室を後にした。
あっ...。
やっと、今まで感じていた違和感の正体に気づいた。
(横島先生、なんのためにここに来たんだ?)
まぁ、いっか。と今度相原さんのことを聞く時(先生を飲みに誘った時)にでも、聞いてみるか。
と呑気に保健室のデスクの前で大きく伸びをした。
次の時間。
A組では、ある事が話題になっていた。