ココロユクエ
『そ〜、ホント初めはコワいだけの人だと
思ってたよ。
外見的には「江角マリコ」似かな。
販売営業一筋で、成績バリバリ上げて
上がってきた人なんだよ。』
『…「江角マリコ」のドラマみたい…』
『ハハッ、確かにそうかも。だから部下
には厳しいんだけど、実績が伴ってる
から注意されても「確かにその通り」
って納得がいくんだよ。』
『……そっか〜』
懸命に話してるしょーたを、まじまじと見てしまう私。
『それでもなかなか成績あがんなくて
落ち込んでた時にさ、会社で、そこの
地域の人も一緒にやるフリーマーケット
があったんだ』
『へぇ、そういうイベントもあるんだ』
『そのフリマに、所長が家族連れて
見に来たんだよ。幼稚園くらいの
男の子と旦那サンと一緒に』
そこでやっと、しょーたは、グラスのお酒をグイッと飲んだ。
『俺らはフリマやる側だった訳だけど、
またその男の子が悪戯坊主で、悪さを
するんだよ。初めは所長も笑って見てた
んだけどね。悪戯が過ぎて、商品が
壊れちゃったんだ。俺らは、「まぁ
子供がやった事だし、しょうがないな」
って感じだったよ。』
『そしたら、所長が男の子叱ったんだよ。
「いたずらし過ぎよ。ほら、悪い事したら、どうするの?」』
イタズラ坊主どママを想像する。
『そしたらさ、その子が俺らの所来て、
「ごめんなさい。壊しちゃって
ごめんなさい。」って、頭ペコンって
下げて謝るんだよ。』
『俺が「いいよ。」って言ったら、顔
あげて恥ずかしそうに「ありがと」って
言って、ママん所戻ってったよ。』
『で、ママに頭撫でてもらって
「お兄ちゃんに、許してもらえて
良かったね。でも、壊したのは悪い事
だよ。もうこういう事しないって、
ママとお約束しようね。」って
ユビキリしてたんだ。それからパパにも
頭撫でてもらってた。』
その状況が頭に浮かぶ。
『それ見てたらさ、やっぱり所長すごい人
だなって思ったんだ。女性で所長で、
ママでもあって、奥さんでもある……
いい家族だなぁって。』