ココロユクエ
 


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結構、空気が冷たくなってきた。


街路樹がほんのり色付き始めている。


待ち合わせのベンチに座っているカレンが見えた。

初めて見る、青いチェックのコートを着ている。




『お待たせ。早く着いた?
 結構、待たせてしまったのかな』

『せい君、大丈夫。そんな待ってないよ。
 天気良かったから、早目に家出てきたの。
 ここの景色を楽しみたくて』

『結構、紅葉してきてるなぁ』

『そうだね。今年は早いね。最近、本当
 急に寒くなってるから』

『…ちょっと歩こうか。歩きながら話そう』


僕は、カレンに、左手を差し出した。


にっこり笑って、右手を重ねて、立ち上がる。


彼女の自然な笑顔が、僕は大好きだった。


『…そのコート、かわいいね。初めて見る。
 新しいの?』

『ありがとう。ステキでしょう。でもね、
 私、着るのは初めてだけど、新しいのじゃ
 ないんだ。実は、母のお古なの。
 母が若い頃に着ていたモノなんだって』

『へぇ、そんな古い感じはしないよ』

『そうよね。タンスで見つけて、すぐ
 気に入っちゃったの。母も喜んでくれた』

『よく似合ってるよ』

『ありがとう。せー君。優しいね』

『本当だよ』

『うん、わかってる。私も嬉しくて。
 ありがとう』


また、にっこりと、笑った。
僕も笑顔で答えた。


『誕生日おめでとう、カレン、21歳だね』

『ありがとう!ちゃんと、覚えてて
 くれたんだね。嬉しい…』

『誕生日当日にデートできるのは、
 初めてだなぁ』

『本当だね。本当だ、嬉しいな』

『…プレゼントなんだけど…』

『うん?』

こちらを見て微笑む。

『何が欲しい?カレンの好きなモノ、
 買いに行こうと思って…』

『…え、どうしよう。何がいいかな。
 考えてなかった。そうだなぁ…』

『ごめん。用意してなくて…』

『ううん、一緒に選べるなんて、嬉しい』

『カレンの好きな店、行こうか』

『そうだね〜、う〜ん、どうしようかな…』

『…アクセサリーとか?服の方がいいかな』


 
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