ココロユクエ
『身につけるモノもいけど…もっと違う
モノにしたいなぁ。折角、一緒に選ぶん
だもの』
『そうだね。今日一日ゆっくり考えよう』
『すぐに決めちゃうのも何だか、
もったいないし。ねぇ、映画観に行こ。
観たいのがあるの』
僕達は駅近くの映画館に向かった。
「プリティー・ウーマン」。
人気映画の秋期特別リバイバル上映だった。
ストーリーは何となく知っていたが、ちゃんと観た事は無かった。
『一緒にラブストーリー観るの初めてだね。
せー君、アクションとか好きだから。
ラブストーリーって観ない?』
『あまり観ないけど、嫌いな訳じゃないよ。
一緒に観るとなると、少し恥ずかしい
ような気分だね。デートで恋愛映画を
観るって、「いかにも」って気がして』
『誕生日だし、いいよね?』
にっこり微笑むカレン。
『いいよ。大丈夫。
「良い映画」だってきくし、観よう』
また、カレンはにっこりと微笑んだ。この笑顔を見たくて、自然に優しくなれる自分に気付く。
昔からずっと一緒にいた。かけがえのない特別な人になったのは、いつだっただろう。
「プリティー・ウーマン」は素敵なラブストーリーだった。
大人の二人の、実はピュアな恋愛。
カップルで観ている人が多くて初めは少し恥ずかしかったが、楽しむ事ができた。
『面白かったね。ジュリア・ロバーツ
ステキだった』
『リチャード・ギアはかなり紳士だな』
『「マイ・フェア・レディ」の現代版
なんだって。観た?』
『観てない』
『白黒映画だよ。
オードリー・ヘプバーンがヒロインで。
確か、花売りだったと思うけど…』
『へぇ』
『ヘプバーンもかわいかったわ。
今日は面白かったね』
『うん、そうだね。ラブストーリー
観るのも、悪くないな』
僕の好きな笑顔で微笑んで、こちらを見る。