ココロユクエ
誰かわからないインディーズバンドの歌。
ギターの音が割れ過ぎてて、ひどい耳障り。
『も〜、お姉ちゃん、その歌うるさい〜
ボリューム下げてよ〜』
『何言ってンの。いい曲でしょ?これ』
『え〜、どこが〜?』
『いいカンジじゃない?
売れると思わん?』
『え〜全然。ギター超下手』
『そぉお?今夏、イチ押しで、来てる
サンプルなんだけど、ダメ?』
『う〜ん、ワタシ的には、ナシ!』
『そぉ?そかな、やっぱダメか。』
お姉ちゃんは、音楽のネット配信の会社に勤めてる。家でも時々、サンプルCDかけて、ワタシにも意見を求めてくる。
ワタシだってよくわかんないけど、思ったとおり言うだけ。
『…ね〜お姉ちゃんの彼氏ってさ〜あ?』
『何?佑史?どしたの?』
『会社の先輩だったっけ?』
『違うよ、取引先の会社の人よ』
『…あ〜、そ〜だったっけ。ふ〜ん』
『…??…羽菜?それがどうかしたの?』
『……別に〜』
『「別に」って何?何よ、キモチワルイ。
……あ〜!羽菜ったら、あんた、まさか
彼氏できたの?
で、会社の先輩なんだ?』
『かっ彼氏って…っ違うよ、そんなんじゃ
ないよっ』
『じゃあ何で』
『彼氏とか、そんなんじゃないよ、その、
まだ……っ』
『「まだ」?「まだ」って事は、それっ
ぽい人いるって事ね?』
『ち、違うよっだから、本当、まだっ』
『…は〜ん、その感じは、あんたの片思い
だね?そうでしょう?』
『だから、違うの、本当、そ〜いうんじゃ
ないの…』
『どうゆうことよ』
『…だから、好きとかそうゆ〜んじゃ
なくて〜………いい人かもしれないって
……ぐらい?』
『何よ、それ。好きなの?』
『…う〜ん、何か恋愛の相手って感じじゃ
ないんだもん。……バツイチらしいし?』
『バツイチ?年上?いくつの人なの?』
『わかんない。7,8こは上っぽい感じ。
もしかしたら10こくらい上かも』
『あらら。羽菜にしては随分年上ねぇ。
先輩で、バツイチで…』