ココロユクエ
お姉ちゃんは、違う新しいCDをセットした。
ピアノの音が鳴る。静かな夜想曲。それに、透明な、女性の歌声が重なる。
『…恋がめんどくさいなんて、まだまだ
コドモだ、羽菜は』
…そうなのかな、やっばり。
『恋は、ギブ&テイクの契約事とは
違うのよ』
『どういうこと?』
『そぉねぇ…そぉだなぁ……
何も与えなくても、与えられなくても
お互いがいれば、自然とみたされる
関係…かな』
少し遠い目のお姉ちゃん。
『なんてね、ちょっとクサかったわ
…やだ、ハズカシ』
二人でクスクス笑った。
確かにちょっとクサいって、さっき言っちゃったけど。
本当はそんな事思ってない。
お姉ちゃんは、そういう恋愛をしてるんだ、佑史さんと。
ステキな恋をしているんだ、って、思えた。
『……いいなぁ』
独り言。
そして
私も、久しぶりに、恋をしたくなった。