御曹司様の求愛から逃れられません！
「おーい絢人ー！」

受付を終えて待合スペースに入ると、亮太さんやサトミさん、その他見知った顔の先輩方の姿があった。
彼らは絢人さんに手を振った後、その隣をちゃっかり歩いている私に気付き、「真夏!?」と声を揃える。

予想どおりの反応に、私は苦笑いで応えた。

「はい。皆さんお久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

「そうそう、マナっちゃんは絢人の会社にいるんだよな。すげーよお前ら、もう運命だよ」

すでに絢人さんが御曹司であることは全員に広め終えていたらしい亮太さんは、さらに新情報をばらまき、皆がふむふむと頷いた。
そういえば、彼には“マナっちゃん”と呼ばれていたっけ。懐かしいな。

「にしても、絢人久しぶり！」

書記だったサトミさんが絢人さんの背中を叩いた。絢人さんと亮太さんとサトミさん、そして私。早織さんを含めて、いつも一緒に活動していた役員のメンバーだ。

「おう。先月帰国したんだよ。全然顔出せなくて悪かったな」

「そうだよー。絢人いつも忙しくて集まりとか来れないんだもん。まさか大企業の御曹司だったとはねぇ」

「悪かったって。これからはしばらく海外行く予定もないし時間作れるから。呼んで」

昔と変わらない先輩方のやりとりが交わされ、私はニコニコと笑ってそれを眺めていた。
別に、黙って話を聞くことは好きだから大丈夫なのに、絢人さんはずっと私を近くに引き寄せてキープし、たまに私だけにこっそりと話しかけてくれる。
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