御曹司様の求愛から逃れられません!
「てかさ、相変わらずだね、絢人。今でも真夏にベッタリなんだ」

先輩方のうちの誰かがそう言った。
え、これって私にだけだったの?と衝撃を受け、しかもこのスキンシップにはどんな意味があったのかを知っている今は、涼しい顔ではいられなかった。

「真夏は可愛いからナンパされないように、俺が守ってんの。ダメだよ、真夏。勝手にどっか行っちゃ」

よく分からない冗談を言いながらギュッと抱き寄せてくる絢人さんにされるがまま、彼の腕の中で大人しくしていた。
さっきからドキドキが止まらない……。今日はいつもの五割増しで格好良いことを自覚してほしい。

「もう。絢人ね、そうやって社会人になってまで真夏をからかうのはやめなさいよ。可哀想でしょ。嫁入り前なんだから」

サトミさんが忠告すると、絢人さんは「分かってる分かってる」といい加減な返事をして、また私にこっそりと「からかってないのにな」といたずらに囁いた。
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