御曹司様の求愛から逃れられません!
まるで映画の予告映像を見ているような完成度の高いオープニングに、すでに会場内はざわめき始める。
昔から絢人さんにこういうものを作らせると本当に天才的で、彼の人を楽しませることへの突出したセンスはいつ見ても惚れ惚れするものだった。

映像が切り替わると、今度は先輩たちの大学時代が映し出された。

絢人さんの自宅へ行ったときに見たたくさんの写真が、映像の中でアルバムのように当てはめられ、どんどん流れていく。
時折、動画も入る。まるで写真が動き出すような演出。動き出した動画はやがて止まり、次々とセピア色の写真に収まって流れていくエフェクトは、過ぎ去った日々への懐かしさを駆り立てた。

「……これクオリティ高すぎじゃね」

ボソッと亮太さんが呟いた。
あの日はやっぱり私が手伝いに行って良かった。こんなこと思ったら失礼かもしれないけど、大雑把な亮太さんより、お役に立てたはずだ。

絢人さんは黙ってスクリーンを見つめている。

「あ、あれ懐かしい。学祭だよね」

サトミさんが指差した。私も見覚えがある、大学の学園祭の映像がダイジェストで流れていた。

「そうですね。あ、絢人さんだ」

「うちのサークルがミスターコンテストの主催だったのに、司会の絢人がイケメンすぎて票が集まっちゃったときの」

サトミさんがケラケラと笑うと、ちょうどそのシーンが出てきた。観客投票でなぜか出場者の名前よりも「司会者の人」と書いた人の方が多くて、絢人さんが困って頭をかくシーン。

懐かしいな。絢人さんはあのときと同じ顔で苦笑いをした。

「あのときはさすがに俺も参ったな」

「優勝者も首傾げてたもんね」

流れている音楽がサビに入るのも、胸いっぱいの気持ちが溢れだす良いタイミング。
私も涙腺がふつふつと緩み始めた。……ダメだ、泣いたら見えなくなる。
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