御曹司様の求愛から逃れられません!
絢人さんたちが三年生になったときの写真が流れ始めると、役員になることが決まっていたひとつ下の私も映り込んでいることが多くなった。

クラブハウスを貸しきってのハロウィンイベントに、ファッションショーの企画。周辺大学合同のクリスマスパーティー。どれもこれも前年になかった新しい試みで、企画したのは絢人さん。
目の回るような楽しい毎日に巻き込まれたのは、いつも絢人さんの後にくっついていたからだ。

早織さんが写っているのは、やはり役員のメンバーとの写真が多く、そこには私もいる。何枚も何枚も、笑顔の私が写っている。
必ず隣には絢人さんがいて、私の肩を抱いて、とびきりのピースサインを作って写っているのだ。

あの頃、彼のそばにいられて本当に楽しかった。
企画したものを実現させるには苦労もたくさんあり、絢人さんと誰かの意見がぶつかったことも、役員の皆がバラバラになったこともあった。
でも私は、ずっと絢人さんを信じて付いてきた。誰かが諦めようと言い出しても、私は絶対、絢人さんが前に進むかぎり、諦めなかった。

あの頃は気付いていなかったけど、私は彼のことがずっと好きだったに違いない。
今までもこれからも、絢人さんの隣にいる以上に心を揺さぶられることなど、ひとつもないのだ。

「……真夏?」

溢れだした涙に、ハンカチをあてることはできなかった。スクリーンの光に包まれながら、私はあの頃が愛しくて泣いていた。

絢人さんがずっと好きだった。

ただ頬をつうっと流れていく。
しゃくり上げていた今までの泣き方と違うからか、絢人さんはスクリーンから目を離して私を見ていた。
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