御曹司様の求愛から逃れられません!
プレゼントムービーが【Thank You】で締め括られると、会場は大きな歓声と拍手が沸き起こった。
隣のテーブルの先輩たちも「絢人すごいよ!」「本当にありがとう!」とこちらへ身を乗り出して声をかけてくる。

早織さんなんて高砂で顔を覆って泣いていた。大成功だ。

その後、結婚式は最高潮のまま、すべてのプログラムを終えた。
引き出物の白い袋をぶら下げたゲストたちは「いい式だった」と口々に言いながら会場を後にしていく。

私は立ち上がらず、絢人さんがこれからどうするのかを席で静かに待っていた。
先輩方が次々と彼のところへやって来て、「この後どうする?」「飲みに行こうぜ」と声をかけてくる。

絢人さんは「どうすっかなー」と笑いながら、曖昧にそれに応えていた。……多分、私のことを気にかけてくれているんだろう。
私は少し困っていた。皆絢人さんと話したいだろうし、先輩たち水入らずの中にこれ以上お邪魔しているのは申し訳ない。

「真夏もおいでよ」

サトミさんが気を遣ってそう言ってくれたが、私も「そうですね」と肯定も否定もしない曖昧な返事をしていた。
絢人さんはどうするんだろう。
< 122 / 142 >

この作品をシェア

pagetop