御曹司様の求愛から逃れられません!
幸せを噛み締めたとき、絢人さんのスーツのポケットの中で、電話が鳴った。
ピリリリ、と目が覚める音がして、私たちの力は一瞬緩む。
「絢人さん、電話……」
「無視無視」
「ダメですよ、出てくださいっ」
彼の肩をトントンと叩いて急かすと、顔を歪め、私を地面に下ろしたが引き寄せたままで携帯電話を取り出した。
絢人さんは画面を見てさらに顔を歪めたが、観念してそれを耳に当てる。
「……おう、何だよ樫木」
また樫木さんか、と私も目を細めた。彼と絢人さんを取り合っている気分になるのも変な話だが、いつもタイミングが悪い。
私は口を曲げながら、樫木さんの電話に耳をそばだてた。
『志岐本部長。社長たちの間で動きがありましたので報告します』
社長たち?報告?やだ、何だろう……。
絢人さんと目が合った。彼は冷静で、顔色ひとつ変えない。
「今はいい。後で聞く」
『いえ、今がよろしいかと』
「ああ?」
『玲奈さんが、志岐本部長と結託して婚約を破談に持ち込んだということを先ほどお父上に白状したようです。お互いに好きな人がいるということも。素直な性格ですから、隠しておけなかったのでしょう』
これには絢人さんも、数秒黙った。
「……それで」
『それにつきまして、社長、また玲奈さんのお父上が志岐本部長にも説明を求めています』
「いいよ、説明しに行く。いつがいいか聞いておいて」
ピリリリ、と目が覚める音がして、私たちの力は一瞬緩む。
「絢人さん、電話……」
「無視無視」
「ダメですよ、出てくださいっ」
彼の肩をトントンと叩いて急かすと、顔を歪め、私を地面に下ろしたが引き寄せたままで携帯電話を取り出した。
絢人さんは画面を見てさらに顔を歪めたが、観念してそれを耳に当てる。
「……おう、何だよ樫木」
また樫木さんか、と私も目を細めた。彼と絢人さんを取り合っている気分になるのも変な話だが、いつもタイミングが悪い。
私は口を曲げながら、樫木さんの電話に耳をそばだてた。
『志岐本部長。社長たちの間で動きがありましたので報告します』
社長たち?報告?やだ、何だろう……。
絢人さんと目が合った。彼は冷静で、顔色ひとつ変えない。
「今はいい。後で聞く」
『いえ、今がよろしいかと』
「ああ?」
『玲奈さんが、志岐本部長と結託して婚約を破談に持ち込んだということを先ほどお父上に白状したようです。お互いに好きな人がいるということも。素直な性格ですから、隠しておけなかったのでしょう』
これには絢人さんも、数秒黙った。
「……それで」
『それにつきまして、社長、また玲奈さんのお父上が志岐本部長にも説明を求めています』
「いいよ、説明しに行く。いつがいいか聞いておいて」