御曹司様の求愛から逃れられません!
招かれるまま、テレビと対面になるように座る。
絢人さんはまだ座らず、鞄を置いたり空気清浄機をつけたりと、帰ってからのルーティンを色々とこなしているようだった。

革張りのソファなのに、ふかふかと柔らかい。

「ジャケット脱いで。楽にしてていいから」

「はい。ありがとうございます」

絢人さんは自分のジャケットも脱ぐと、綺麗に折ってサイドのソファの背にかけた。
私も脱いで、それを畳んでバックの取っ手の間に軽く挟み、足元に置く。

……さすがに、緊張してきた。

「ワイン飲む?」

今度はキッチンの方から絢人さんの声がした。
振り返って確認すると、黒い冷蔵庫の隣に小さなショーケースがあって、ワインの底がこちらを向いて何本も入っているのが見える。
彼はそれを開けて、一本取り出した。

「いいんですか?」

「色んな人から貰うんだよ、ワイン。……好き?」

「はい。いただきます」

ワイングラスをふたつ器用に持って、高そうな赤ワインとともにテーブルの上に置くと、絢人さんは私の右隣に座った。
ソファはL字になっているのに、ここに座るんだ……。

開け方も注ぎ方も正しくできる自信がないので手は出さず、夜景に光るワイングラスに彼が深い赤を注いでいく幻想的な様子を、ただ息を飲んで見つめていた。
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