御曹司様の求愛から逃れられません!
「可愛いよ、真夏」

「絢人さん、ちょっと、ホントに……」

「食っちまおうかな」

私の匂いを嗅ぐように髪に鼻先を押し当ててくる。絢人さんの気配が耳や首筋にも感じられ、ぞわりと甘い感覚が全身に走っていく。

もしかして、絢人さん……酔ってる?
絶対そうだ、酔ってなきゃこんなことするわけない。

記憶ではお酒にめちゃくちゃ強かった気がするんだけど、今日は疲れも溜まってお酒の回りが早かったんだろうか。

拒否をしようとすると、わき腹にあった手が今度は私の左手を捕まえた。両手の自由を奪われ、本格的に身動きがとれなくなる。

「絢人さんっ、酔ってるんですか」

「俺の酒の強さは真夏が一番よく知ってるだろ」

「ひゃあっ……!」

今度は耳!
耳の外側に唇をつけられ、咥えられ、ついにはクチュッと舌が這う音がした。

たまらず体を仰け反らせると、持っていたグラスの水面が大きく揺れ、赤いワインが絢人さんのグレーの太ももに大きくかかった。

「あっ、す、すみませっ……ああっ……」

彼はそんなことはお構い無しで、執拗に耳や首筋を攻め立ててくる。私はついに身の危険を感じ、力強くグラスをテーブルの上に置くと、彼の手を振り切った。

「大丈夫?真夏」

「……“大丈夫?”じゃないですよ……何するんですか、絢人さんっ……」

「なんで?ダメだった?」
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