御曹司様の求愛から逃れられません!
距離は変わらないまま、絢人さんはパッと手を放した。それでもまったく悪びれる様子はなく、むしろ自信満々な笑みを浮かべている。

一瞬、私が間違っているのかと流されそうになったけど、間違いじゃない。恋人でなければこんなことはしないはず。おかしいのは彼だ。

「絢人さん、きっと海外でモテモテだったんでしょ。……だからこんなに見境なくなったんですね」

私がそう言ったとたん、彼は微笑みを消した。

「真夏にだけだよ」

「嘘です!」

「………真夏はさー……」

顎を持ち上げられ、そのまま迫られる。それから逃れようとすると、自然と背中がソファの上に落ちていった。

「絢人さんっ」

仰向けの私の上にすぐに色っぽい体が被さってきて、天井を背景とした絢人さんの顔しか見えなくなる。ちょっと、この体勢はさすがにまずいんじゃない……!?

大胆な構図に息もできずにいると、彼はあと数センチで唇が触れる距離のまま呟いた。

「真夏はさ、いつまで俺のこと無視してるつもり?」

射られるような視線に体が凍りつく。

「む、無視……?」

「しらばっくれんなよ。お前のこと好きだから手に入れるって言ったろ。覚悟して待ってろって」

それは……。もちろん覚えてる。“あのメッセージ”のことだ。
一週間前、日本に帰国する直前であろう絢人さんから、突然届いたメッセージ。
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