御曹司様の求愛から逃れられません!
チュ、という唇の音が鳴った。

待って、絢人さん、キスが上手い……!
キスだけで気持ちいいってこういうことなのかと軽いカルチャーショックを受ける。こういうことにおいても、彼には天性の才覚があるに違いない。
時折舌で攻められると、口の中にはワインの味が再度広がった。

「真夏……」

お前も舌を絡めろ、と指示をされているみたいに名前を呼ばれ、なぜだか私はその通りにした。
ダメだ、全然、抵抗できない……。魔法みたいに気持ちいい……。

とろけるキスが数分続いて、体中骨抜きになった私に絢人さんはまた笑みを落とした。

「可愛いね。真夏のそういう顔、初めて見た。……たまんないな」

絢人さんの指先が、私のブラウスのボタンを器用に外していく。二、三個外したところで、私は彼の手を押さえた。

「あの、待って……」

「ん?」

私に手を止められると、彼は首筋へのキスに切り替えた。ボタンが二、三個開けばそれは容易にできたのだ。
気持ちよくて体が硬直する私を溶かすかのように、そこを吸ったり、舐めたりしてくる。

「あ、絢人さんっ……お願い、待って……」

私が本当に何か言いたそうだと察知した彼は、もう一度唇にキスをしてから、少しだけ待ってくれた。視線を合わせ、“どうしたの?”と囁く。
< 24 / 142 >

この作品をシェア

pagetop