御曹司様の求愛から逃れられません!
「帰らなくてもいいよ、真夏」
「なっ……」
「ただ、手を出さないのは無理」
「……帰ります」
一瞬揺らいだものの、捕食者の眼を見せた絢人さんから逃げ出すことを決めた。ほだされそうになった自分が怖くなる。けれど一番怖いのは、帰ろうと立ち上がった今もほだされつつあることだ。
「下まで行こうか。エントランスに停まってるって」
「い、いいです。ここで。絢人さんにワイン溢しちゃったままですし。……お邪魔しました」
ゆるく絡み付く腕をほどきながら、遠慮というよりは牽制する意味で彼を押し返した。
彼もそれで納得したのか、最後は私の頭に手を乗せるだけで終わった。
「おう。また会社でな。頑張れよ」
「はい。では、また明日」
「真夏。愛してる」
あまりにすんなりと言われ驚くことすらできず、「はあ」と頷くだけの返事だけをしてすぐに玄関から逃げ出した。
扉を閉めると、内側から「無視かよ」という不満の声が聞こえてくる。
エレベーターに乗り込むと、自分の息が上がっていることに気がついた。顔の熱さを手のひらで感じながら、その指を唇にあててみる。
……絢人さんのキス、すごかった。まだ唇だけが別物みたいにジンと痺れてる。
「なっ……」
「ただ、手を出さないのは無理」
「……帰ります」
一瞬揺らいだものの、捕食者の眼を見せた絢人さんから逃げ出すことを決めた。ほだされそうになった自分が怖くなる。けれど一番怖いのは、帰ろうと立ち上がった今もほだされつつあることだ。
「下まで行こうか。エントランスに停まってるって」
「い、いいです。ここで。絢人さんにワイン溢しちゃったままですし。……お邪魔しました」
ゆるく絡み付く腕をほどきながら、遠慮というよりは牽制する意味で彼を押し返した。
彼もそれで納得したのか、最後は私の頭に手を乗せるだけで終わった。
「おう。また会社でな。頑張れよ」
「はい。では、また明日」
「真夏。愛してる」
あまりにすんなりと言われ驚くことすらできず、「はあ」と頷くだけの返事だけをしてすぐに玄関から逃げ出した。
扉を閉めると、内側から「無視かよ」という不満の声が聞こえてくる。
エレベーターに乗り込むと、自分の息が上がっていることに気がついた。顔の熱さを手のひらで感じながら、その指を唇にあててみる。
……絢人さんのキス、すごかった。まだ唇だけが別物みたいにジンと痺れてる。