御曹司様の求愛から逃れられません!
あまりにショックで、目の前のドリアをこれ以上食べる元気がなくなった。
はしゃぐ絢人さんと日野さんとは対照的に、私は顔が勝手に沈み、何も言葉が出てこない。
「どうした、園川。俺のものになる気になった?」
また肩を抱かれそうになるが、私はその手を弾き返し、下を向いたまま目を合わせない。
「……触らないでください」
どうにか言葉を絞り出したとき、三人で囲っているこのテーブルに、さらに別の人の手が置かれた。
「そこまで。志岐本部長、戻りますよ。やはり目立ちますので、昼食は外で食べましょう」
横から割って入ったのは今まで黙って立っているだけだった樫木さんだった。近くで見ると絢人さんより背が高く、まるでクロヒョウのように迅速な身のこなし。華奢なメガネの奥にある切れ長の鋭い目が、私たち三人を睨んでいた。
彼は大きな音を立てず、スパンと場を切るようにテーブルに手を置いたのだ。
「……なんだ樫木。プライベートにまで口を出すなと言っているだろ」
誰にでも愛想のいい絢人さんだが、樫木さんには先ほどから笑顔を見せない。樫木さんの方も、絢人さんにうんざりしているような表情ばかり見せている。
「昼食中と言えど、貴方にはプライベートはありません。あまり迂闊に女性社員に声をかけないでいただきたい」
厳しい言葉に、日野さんは「ケチー」と小さく呟いた。私は樫木さんに賛成だ。婚約者のいる身で、あちこちと女性に声をかけるべきではない。絢人さんったらいつからこんなことを人に教えてもらうような、ダメな大人になったのだろう。
はしゃぐ絢人さんと日野さんとは対照的に、私は顔が勝手に沈み、何も言葉が出てこない。
「どうした、園川。俺のものになる気になった?」
また肩を抱かれそうになるが、私はその手を弾き返し、下を向いたまま目を合わせない。
「……触らないでください」
どうにか言葉を絞り出したとき、三人で囲っているこのテーブルに、さらに別の人の手が置かれた。
「そこまで。志岐本部長、戻りますよ。やはり目立ちますので、昼食は外で食べましょう」
横から割って入ったのは今まで黙って立っているだけだった樫木さんだった。近くで見ると絢人さんより背が高く、まるでクロヒョウのように迅速な身のこなし。華奢なメガネの奥にある切れ長の鋭い目が、私たち三人を睨んでいた。
彼は大きな音を立てず、スパンと場を切るようにテーブルに手を置いたのだ。
「……なんだ樫木。プライベートにまで口を出すなと言っているだろ」
誰にでも愛想のいい絢人さんだが、樫木さんには先ほどから笑顔を見せない。樫木さんの方も、絢人さんにうんざりしているような表情ばかり見せている。
「昼食中と言えど、貴方にはプライベートはありません。あまり迂闊に女性社員に声をかけないでいただきたい」
厳しい言葉に、日野さんは「ケチー」と小さく呟いた。私は樫木さんに賛成だ。婚約者のいる身で、あちこちと女性に声をかけるべきではない。絢人さんったらいつからこんなことを人に教えてもらうような、ダメな大人になったのだろう。