御曹司様の求愛から逃れられません!
樫木さんは日野さんからネクタイを奪い返し、スーツの中に戻し始めると、軽く息をついた。
「そうですね。失礼致しました。……しかし、これは貴女のための忠告です。聞けば園川さん、貴女は志岐本部長のことをよくご存知とのこと。……彼の女性関係については?」
改めて聞かれたが、学生時代から絢人さんのその方面については全く関知していない。知っていることは、現在婚約者がいる、ということだけ。
ところがそれも、誰にどこまで公表していい情報なのかもまだ分からなかった。
「……そういうことは、何も聞いていませんけど」
樫木さんは、フッと馬鹿にした笑みを落とす。
「そうでしょう。彼が誰かに本気になるということはありません。遊ばれて痛い目を見たくないのなら、貴女の身を守るためにも、彼から離れた方がいい」
それだけ言い残されると、樫木さんの顔が離れていき、こちらが何か言い返す前に彼はすでに見えなくなっている絢人さんを追いかけて去っていった。
彼らが嵐のようにいなくなったので、取り残された私たちは周囲が急に静かに感じた。
……何なのよ。こっちだって分かってることをベラベラと言うだけ言っちゃって。私だって本気にしてないっつーの!
悔しくて気分が悪くなり、ドリアを半分残してスプーンを置いた。
「園川さん大丈夫?気にすることないよ、あんなの。本部長は本気だって言ってたんだもん」
あくまで私と絢人さんを応援する前提で話を進める日野さんに、私の目元はピクリと動く。
「……あのね日野さん。私、別に本部長のこと好きじゃないよ。それに、樫木さんの言ってることは事実だし」
そう……事実だ。
本気にしたら、遊ばれて捨てられるのがオチ。あんな嘘をつく人になっちゃったんだもの。重鎮の補佐にあそこまで言われるなんてよっぽどだ。
「そうですね。失礼致しました。……しかし、これは貴女のための忠告です。聞けば園川さん、貴女は志岐本部長のことをよくご存知とのこと。……彼の女性関係については?」
改めて聞かれたが、学生時代から絢人さんのその方面については全く関知していない。知っていることは、現在婚約者がいる、ということだけ。
ところがそれも、誰にどこまで公表していい情報なのかもまだ分からなかった。
「……そういうことは、何も聞いていませんけど」
樫木さんは、フッと馬鹿にした笑みを落とす。
「そうでしょう。彼が誰かに本気になるということはありません。遊ばれて痛い目を見たくないのなら、貴女の身を守るためにも、彼から離れた方がいい」
それだけ言い残されると、樫木さんの顔が離れていき、こちらが何か言い返す前に彼はすでに見えなくなっている絢人さんを追いかけて去っていった。
彼らが嵐のようにいなくなったので、取り残された私たちは周囲が急に静かに感じた。
……何なのよ。こっちだって分かってることをベラベラと言うだけ言っちゃって。私だって本気にしてないっつーの!
悔しくて気分が悪くなり、ドリアを半分残してスプーンを置いた。
「園川さん大丈夫?気にすることないよ、あんなの。本部長は本気だって言ってたんだもん」
あくまで私と絢人さんを応援する前提で話を進める日野さんに、私の目元はピクリと動く。
「……あのね日野さん。私、別に本部長のこと好きじゃないよ。それに、樫木さんの言ってることは事実だし」
そう……事実だ。
本気にしたら、遊ばれて捨てられるのがオチ。あんな嘘をつく人になっちゃったんだもの。重鎮の補佐にあそこまで言われるなんてよっぽどだ。