御曹司様の求愛から逃れられません!
彼のおっしゃるとおり、大学時代、ひとつ年上の彼とはそれはそれは濃い付き合いをしてきた。

同じイベント企画サークルの仲間で、彼は会長、私は庶務。当時は彼に秘書のように連れ回され続けたせいで、“大学の後輩”という言葉で片付けてほしくないほど苦楽を共にしてきた覚えがある。
でもそれも、もう昔の話。

「ああ、そうなんですね。園川さんには営業企画部に来て大活躍してもらってますよ」

部長が私を持ち上げて下さったので、ありがたく苦笑いで頭を下げる。すると本部長はまたあの笑い方で私を見た。

「ええ。彼女は大学時代から優秀でした。とても、ね」

むむむ……。まるで、あの頃の私の苦労を嘲笑っているかのような微笑み。
無茶ばかりする会長と、それをどうにか整えていかなきゃならない庶務。思い出すとげっそりとする。……彼のそばにいると本当に色んな経験ができるから、まあ、結構楽しかったんだけど。

「それでは、営業企画部の皆さん、どうぞよろしくお願いします。……皆さんを見て安心しました。一緒に良い仕事をしましょう!楽しみにしています」

アイドルのライブかと思うほど、黄色い歓声が沸き起こる。本当にキザな人だ。大学時代も女の子にモテ散らかしていたけれど、ここでも同じことになるだろう。
……で、それをいつもプラスの原動力に持っていけるっていうところは、私も認める彼のすごいところだ。

平穏に過ごしていた私は複雑な気持ちで、ランウェイを去っていく彼を見ていた。
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