御曹司様の求愛から逃れられません!
「……ちょうど半年前よ。絢人が急に、婚約を解消してほしいって言い出したの。彼だって愛情のない私との婚約を受け入れつつあったのに、本当に急に、よ」
玲奈さんは、意味ありげな笑顔を浮かべ、そっと私を見つめ返してきた。
……“半年前”。私はドキリと胸が鳴る。
「私も最初は反対したわ。正直、会社のためには申し分ない相手だし、もう後戻りできないところまで話は進んでいたの。……私はお父様を落胆させることは絶対にしたくなかった。だから絢人との婚約を破棄するなんて、とても受け入れられなかったわ」
……それが、どうして……。
「でも、絢人は破談の計画を上手く立てて、それを強引に進めていったの。将来的に統合する話まで出ていたのに、彼は破談の話を伏せたまま、双方に損害が出ないよう会社を誘導していったわ。そのときは、もう見事としか言えなかったわね。……だから私も、彼を信じてみることにしたの」
そのときの彼女の表情は、お金持ちのご令嬢ではなく、恋する乙女でもなかった。
彼女は絢人さんの“同志”なのだ。
でも、彼女の話にはまだ腑に落ちないことがあった。愛情がなくとも、絢人さんは婚約者として完璧な相手だと言った。それはきっと絢人さんも同じだったはず。それでも破談にする理由は……?
「……どうして……」
「ふふ、絢人がそこまでして破談にしたい理由、何だと思う?」
「さ、さあ……」
「“好きな人を追いかけたい”、そう言ってたわ。忘れられない人が手が届くところにいると偶然知って、今度はその人と離れたくない。好きだって伝えたい、って。……そう、真夏さんのことよ」
玲奈さんは、意味ありげな笑顔を浮かべ、そっと私を見つめ返してきた。
……“半年前”。私はドキリと胸が鳴る。
「私も最初は反対したわ。正直、会社のためには申し分ない相手だし、もう後戻りできないところまで話は進んでいたの。……私はお父様を落胆させることは絶対にしたくなかった。だから絢人との婚約を破棄するなんて、とても受け入れられなかったわ」
……それが、どうして……。
「でも、絢人は破談の計画を上手く立てて、それを強引に進めていったの。将来的に統合する話まで出ていたのに、彼は破談の話を伏せたまま、双方に損害が出ないよう会社を誘導していったわ。そのときは、もう見事としか言えなかったわね。……だから私も、彼を信じてみることにしたの」
そのときの彼女の表情は、お金持ちのご令嬢ではなく、恋する乙女でもなかった。
彼女は絢人さんの“同志”なのだ。
でも、彼女の話にはまだ腑に落ちないことがあった。愛情がなくとも、絢人さんは婚約者として完璧な相手だと言った。それはきっと絢人さんも同じだったはず。それでも破談にする理由は……?
「……どうして……」
「ふふ、絢人がそこまでして破談にしたい理由、何だと思う?」
「さ、さあ……」
「“好きな人を追いかけたい”、そう言ってたわ。忘れられない人が手が届くところにいると偶然知って、今度はその人と離れたくない。好きだって伝えたい、って。……そう、真夏さんのことよ」