御曹司様の求愛から逃れられません!
「泊まってけよ、真夏」
彼に向けていた背中がピクリと揺れた。振り返ると、絢人さんは机に散乱したものを片付け始めている。
「え……?」
「今日はもう遅いし、帰るのも面倒だろ。その格好なら寝れるよな」
私が黙ってソファを降りた床にぺたんと座っていると、絢人さんは手を伸ばして、頭を撫でてきた。
「大丈夫だよ。何もしない。……ちゃんと我慢するから。お前と一緒にいたいんだ。……な?」
前髪に触れる指の隙間から、絢人さんの優しい笑顔が見えていた。
これはもう、泊まる以外の選択肢はないだろう。
私も、来週から結婚式まで会えないというなら、できるだけ長く一緒にいたい。
私はソファに戻った。
足元に転がっていたレンタルショップの黒い袋を引き寄せると、中に入っていたDVDを出して、彼に見せた。
「仕上げは明日の朝にして、ミステリー観ます?」
「おう、イイね!観るか」
プレーヤーにDVDをセットすると、導入の宣伝が始まった。まるで大学時代に戻ったみたいに、絢人さんにくっついて座る。かすかな緊張を彼から感じたけれど、“我慢する”という言葉を信じることにした。
その代わり、絢人さんは手を握ってきた。私も握り返す。導入が終わらないうちに、絢人さんは一度だけキスもしてきた。
「……絢人さん」
「あのさ、真夏。俺がオーストラリアから帰ってきて、早織の結婚式が終わったら……そのときお前の返事が聞きたい」
彼の顔は、今日で一番真剣なものだった。ついに期限を決められ、私はゴクリと息を飲む。
絢人さんと離れてゆっくり考えて、結論を出す。私もそれが正しい気がした。コクリと頷いて、彼を見た。
最後にもう一度キスをした。これが今日最後のキスだろう。
終われば何もなかったのかのように映画に目を戻し、ふたりとも背もたれに沈む。
朝目覚めるまで、映画は付けっぱなしのまま、どちらもソファで眠っていた。
彼に向けていた背中がピクリと揺れた。振り返ると、絢人さんは机に散乱したものを片付け始めている。
「え……?」
「今日はもう遅いし、帰るのも面倒だろ。その格好なら寝れるよな」
私が黙ってソファを降りた床にぺたんと座っていると、絢人さんは手を伸ばして、頭を撫でてきた。
「大丈夫だよ。何もしない。……ちゃんと我慢するから。お前と一緒にいたいんだ。……な?」
前髪に触れる指の隙間から、絢人さんの優しい笑顔が見えていた。
これはもう、泊まる以外の選択肢はないだろう。
私も、来週から結婚式まで会えないというなら、できるだけ長く一緒にいたい。
私はソファに戻った。
足元に転がっていたレンタルショップの黒い袋を引き寄せると、中に入っていたDVDを出して、彼に見せた。
「仕上げは明日の朝にして、ミステリー観ます?」
「おう、イイね!観るか」
プレーヤーにDVDをセットすると、導入の宣伝が始まった。まるで大学時代に戻ったみたいに、絢人さんにくっついて座る。かすかな緊張を彼から感じたけれど、“我慢する”という言葉を信じることにした。
その代わり、絢人さんは手を握ってきた。私も握り返す。導入が終わらないうちに、絢人さんは一度だけキスもしてきた。
「……絢人さん」
「あのさ、真夏。俺がオーストラリアから帰ってきて、早織の結婚式が終わったら……そのときお前の返事が聞きたい」
彼の顔は、今日で一番真剣なものだった。ついに期限を決められ、私はゴクリと息を飲む。
絢人さんと離れてゆっくり考えて、結論を出す。私もそれが正しい気がした。コクリと頷いて、彼を見た。
最後にもう一度キスをした。これが今日最後のキスだろう。
終われば何もなかったのかのように映画に目を戻し、ふたりとも背もたれに沈む。
朝目覚めるまで、映画は付けっぱなしのまま、どちらもソファで眠っていた。