俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「上」
黄金色の液体に、俺の喉が鳴る。目はビールから逸らすことができない。

男性はニヤニヤしながらビールの入ったジョッキを俺に渡した。

「さて、世界平和対策本部議長のリーバス・ヴィンヘルムくんの誕生を祝おうか」

ジョッキを傾けようとした俺は、慌ててジョッキをテーブルに置く。危ない、もうすぐで取り返しのつかないことになりそうだった。

ビールを飲んでしまえば、俺は強制的にその対策本部の議長にさせられていたのだろう。

「……ビールは飲みません。なので、この話はなかったことにしてください」

目の前の誘惑に心がぐらつくが、面倒なことに巻き込まれたくはない。そんな俺を見て、男性がまるで悪の帝王のように笑い出した。

「飲むも飲まないも、この話を聞いた時点でお前はもう対策本部の議長だ。なぜならこの話はまだ一般人には知られていないことなのだからな。お前に拒否権というものは、もともと存在しないんだ」

呆然とする俺の手に、ジョッキが再び握られる。

「まあ、頑張りたまえ」

結局、俺は強制的に議長となってしまった。ちなみに男性の名前は聞いていない。男性は最後まで名乗らなかったし、俺も聞く気はなかった。

……久しぶりのビールは、恐ろしいほどうまかった。
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