優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
なかったって私だって分かった。大人しくしていたらピアスホールは気づかれなかったのに、更に先生のチェックが厳しくなると思う。
どうしてそう血の気が多いんだろう。

「ちょっと爪が長いかな。武田さん向こう」

 ピアスホールは気づかれなかったけど難癖をつけられてしまったようだ。可哀想だと思うけど、やり過ごせばいいのに。そう小心者の私が心の中で毒づいている。
 あーあ……。

「まじねえわ。脱ぐし。脱げばいいだろ」
「うるさいぞ、陣之内」

 紗矢ちゃんが居残りになった瞬間、不機嫌そうに腕を組んで壁にもたれかかっていると、同じく居残り組の男子たちが体育館からこちらに移動してきたようだった。

「つか、ありえなくね? シャツが派手だからアウトってさ。俺のこと嫌いなだけじゃね? ほーら脱いだ。脱いだから俺帰るー」

「止めんか。どっちにしろお前は遅刻しかしてないから居残りだ」

 クスクスと女子たちから笑い声が漏れる。

うちのクラスの男子の居残りは彼だけだったようだ。
下半身裸の、先生より頭一個大きい陣之内優大くん。確か180センチ超えてると言っていた。
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