優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「蕾、あんた、受験はそこの花摘高校でいいのよね?」
お味噌汁の匂い。その上にタッパから取り出したねぎをまき散らしながら、朝から憂鬱になる言葉が飛び出した。
沈まずに浮かんでいるねぎを、箸で沈めていく。
卵焼きが目玉焼きが聞かれて、卵焼きを頼んで待っている間に、その台詞を言われてしまった。
「うん。そこか商業高校か私立しかうちの近くにはないし」
普通科は花摘高校しかない。あとは花摘商業と花摘工業、そして私立の中央第一。
うちの学校のほとんどは普通科に行く。紗矢ちゃんは推薦で中央第一。
うちは私が一人っ子とはいえお父さんも中小企業だしお母さんは専業主婦だし、私立は逆立ちしても無理って言われていた。
「あら、隣の市にもあるじゃない。駅前の」
「なんで近くにあるのに向こうに行くの?」
隣の市なんて電車に乗らないといけない。
「少しだけ、向こうの方が偏差値が高いのよ」