優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



揺蕩う水面を、赤で色を塗る。
教室を赤で塗る。
窓に映る水面を、赤で塗る。
それだけでホラーチックに見える。


水面は、説明書を読みながらデジカメで撮った写真を加工して使ってみた。
ので、絵がそんなに時間がかからず、数日で完成しそうだった。

でも優大くんが望むような絵ではないかもしれない。

 一位の人とはやはり比べ物にならない、お粗末な仕上がりだ

 線だってよれよれではみ出してしまう。ただ、デジタルのいいところは、やり直しができるとこだ。色や線を失敗しても、戻る選択が許される。


 今、私たちが過ごしているこの時間は、戻れないのに。
 下手くそに生きてきたから、わかる。
 やり直しなんて、私たちには許されないのだ。

「あ、パソコンが止まった!」
ペンタブの画面を何度ペンで押しても、パソコンが動かない。

「これ、どうしたらいいんだろう?」
「とりあえず、消えないように保存。保存しましょ」
「ほ、保存? えっと」

 ペンタブは動かないのに、マウスは動いたので急いで説明書を見ながら保存した。
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