優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
やがて茜色の空が、夜の色に染まるまで、ずっと。
いまだけは起こしたくなくて。
*
『下校の時間になりました。18時55分に先生が見回りに各教室へ向かいます。生徒は速やかに下校の準備をしてください』
「え!」
放送の声と共に、ガバっと起き上がった優大くんは空を見たあと、まわりをきょろきょろと見渡した。
「……ここ、どこ?」
「図書室です」
「俺は誰?」
「優大くんです」
私が答えると、頬を赤らめた。
「優大くんって呼び方、可愛いー」
自分で呼べって言ったくせになんで照れてるの。
そう言おうとして、諦めて私は一枚、紙を差し出した。
「今日はここまで描いてみたんです。データーは、あのパソコンはネットにつながってないので、CDROMを用意しなくちゃ渡せなくて」
「おおおお、雰囲気出てる。やばくね? めっちゃプロっぽくね? 表紙詐欺じゃね―!」
紙を持ってくるくる回って喜ぶ彼にもうしわけなくなる。
中学生の画力で、そんな上手くないのにここまで喜んでもらえると、とても嬉しくなる。
「急いで準備しないと、先生が来ちゃうよ」