優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「待っててくれたの? これ置いて先に帰ってくれてよかったのに」
いそいそとカバンにノートを入れながら言うので、こっちも照れてしまう。
「ううん。私も図書室で勉強しようって思ったから」
「何勉強してたの?」
「うわ、見たら駄目です」
私の持っているノートを奪おうとしたので、すぐに後ろに隠した。
「えー、いいじゃん。見せてよ。俺のノート見せるから」
「や、だめ――」
逃げ出そうとして、ノートを床に落とした。
パラパラと風にめくれて、私が描いていたページを彼が見て目を大きく見開く。
「残ってるもの、帰りなさい」
しかも、図書室の見回りに来たのは、優大くんと因縁深い織田先生。
優大くんは私を本棚に隠してくれて、真っ赤な顔を伏せつつ「わかりましたー」って答えた。
織田先生が「めずらしいやつが残ってるな」って呟きながら消えていくと、大きく見開いていた目で私をとらえた。
「……こーゆうの、まじ無理」
「無理って?」
「期待しちゃうだろ」
真っ赤な彼の顔が近づいてくる。
本棚に隠されて逃げる場所がない私は、近づいてくる顔をなぜか拒否することができなかった。